第2回
特別な場所ではなく、ふつうの暮らしの中へ
日常に根づいた福祉の思想
第1回では、世界に先駆けて高齢化を経験したスウェーデンが、福祉国家として歩みを始めた頃、人の「尊厳」や「自立」をどのように守ろうとしてきたのかをたどりました。
当時の施設は、まだ収容を前提としたもので、入所はできる限り避けたい、最後の手段として考えられていました。
第2回では、そうした時代を経て、日々の暮らしの場そのものを大切にする考え方が、どのように育まれていったのかを見ていきます。
特別な場所ではなく、ふつうの暮らしの中へ
~ノーマライゼーション~
1950年代デンマークの知的障がい者の親の会による運動をきっかけに生まれた「ノーマライゼーション」の理念は、1960年代スウェーデンのベンクト・ニィリエが8つの原理として整理し、世界中に広めました。(図:ノーマライゼーション 8つの原理)
障害者や高齢者が特別に隔離されるのではなく、地域社会の中で「普通の生活」を送ることを目指す考え方であり、福祉に大きな良い影響を与えました。施設中心のケアから在宅・地域ケアへの転換が進み、住み慣れた環境で生活を続けられるようになった。また、個人の尊厳や自己決定が尊重されるようになり、利用者主体のケアが重視されるようになりました。さらに、障害者や高齢者に対する社会の理解が深まり、差別や偏見の軽減にもつながりました。バリアフリー化やユニバーサルデザインの推進により、誰もが生活しやすい社会環境の整備が進んでいて、福祉サービスが「保護」から「社会参加の支援」へと変化し、就労や地域活動への参加の機会も広がりました。
1980年代に定められた理念は、今もスウェーデン福祉の軸
1982年に、現在とつながる大きな改革があり、スウェーデンの保健社会庁(Socialstyrelsen)などの国の機関は様々な機会において福祉社会における基本理念を法律にしました。社会サービス法の制定です。
スウェーデンの全体的な福祉制度には、この理念とそこから作られた制度の大きな目的は「自立支援」ということもいえます。高齢であっても若くても、健常でも何か障害があってもだれでも出来る限り「自分らしく」、「自分が好きな慣れ親しんでいる生活」、「自分が好きな慣れ親しんでいる環境」の中で生活をしたいというのがこの自立支援の基本です。好きで慣れている生活・環境というのはもちろん国によって異なり、また大切なのは「個人」によっても異なるということですが、一方で、自立を支えるサポートが必要であればそれを相応しく得られるために自己決定がいります。具体的には自立を支える個人に合わせた福祉に望ましいのは次のようなことになりました。個人の表現が受け止められ、その表現が自分の介護・自分の生活に対して実際の影響力を持ち、福祉制度がその自立を支える個人に合わせた介護を提供することになりました。これによって、福祉制度を大きく変化しました。
「出来る限り相応しい介護が得られる。例えば、自立の中の慣れている環境であれば、それは何処かの隠れている施設ではない。それは自分の家か出来る限り地域の中にある似たような環境である(ノーマライゼーション・近隣性)。そういう環境の中で相応しい介護を受けながら安心出来る(安全性)。自立の中の「好きな生活」であれば出来る限り好きなこともする(活性化)。福祉制度がこのように総合的に様々なサービスを提供可能とし(ニーズの総合的把握)、個人を支えることができる(人格の尊重)。